りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

レディ・ヴィクトリア 4(篠田真由美)

イメージ 1

19世紀末ヴィクトリア朝のロンドンを舞台にして、天真爛漫なレディ・シーモア(ヴィク)と、国際色豊かな使用人たちが活躍する「歴史ミステリ」の第4弾は、女性解放問題を取り扱っています。「家庭の天使」こそ理想の主婦とされたヴィクトリア時代においても「家庭内抑圧」が問題になり始めていたのです。

未亡人のヴィクが友人のアメーリア嬢から誘われた先は、最近ミイラを手に入れたというロード・ペンブルックの城館でした。実はペンブルック家の娘は義母を憎んでいるシーモア家の長男と結婚して、ヴィクを目の敵にしているのですが、純粋なアメーリア嬢は両者の和解をもくろんでいたのです。

しかしながら、病で宮廷の職を辞したものの家庭内の暴君と化していたペンブルック卿にとっては、女性たちの愛憎劇など目に入っていなかったようです。ヴィクに罵声を浴びせかけたあげく、何者かによって2階から突き落とされてしまいます。しかしそれが可能な位置にいたのはミイラのみ。ヴィクは傷害の疑いをかけられてしまうのですが・・。

物語が、ヴィクに同行した新米メイドのローズ視点で綴られる点がいいですね。彼女にとっては全てが新鮮で全てが謎めいているのです。それでも敬愛する奥様の耳目となって、メイド仲間たちの会話や、若いメイドに手を出そうとする不埒な男性の挙動を懸命に観察したことが、後になって役立ってきます。ぺンブルック家の忌まわしい過去を清算する謀に、なぜヴィクが呼ばれたのでしょう。

著者は、女性の地位をめぐる問題はヴィクトリア時代とさして変わっていないと嘆息しています。副題となっている「謎のミネルヴァ・クラブ」が現代の組織であっても違和感がないことに、読者も嘆息してしまいます。

2019/3