りぼんの読書ノート

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12モンキーズ(エリザベス・ハンド)

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1995年に、ブルース・ウィリスマデリーン・ストウブラッド・ピットの主演で映画化された作品です。シンガポールで見たのですが、難解で理解できませんでした。20年後に本書を読んで、ようやく理解した次第です。

21世紀初頭、全世界に蔓延したウィルスによって人類は絶滅寸前であり、密閉された地下都市で細々と暮らしています。科学者たちは歴史改変を試みて、ウィルス発生時点である1996年に、タフで観察力の鋭い囚人コールを送り込むことを決定。彼は「空港で射殺される男」という悪夢を繰り返し見ていたのですが、その謎も最後に明かされます。

コールが過去で見つけたのは「12モンキーズ」と名乗る謎の集団でした。そしてそのリーダーとなっている狂的なジェフリーは、世界的なウィルス学者の息子だったのです。コールは、彼の正常性を疑う精神科医のキャサリンを強引に拉致して、ジェフリーらを追うのですが・・。

この作品のテーマは、人類滅亡とか、歴史改変とかの「大きな物語」ではありませんね。度重なる時間軸の移動によって朦朧となった主人公が、混乱の中で、自分にとっての真実を見出すまでの「小さな物語」なのでしょう。

ラストの空港の場面で、視点が少年に切り替わる演出が見事です。撃たれたコールにとっては、人類滅亡を防げなかった絶望よりも、悪夢の謎が解けた安堵のほうが大きかったのかもしれません。もっとも冷静に考えれば、タイムマシンを有している人類にとっては、これが決してラストチャンスでははないのですが。

2018/12