りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ネヴァーランドの女王(ケイト・サマースケイル)

イメージ 1

1900年に生まれて94年の生涯を奔放に生きた実在の女性、ジョー・カーステアズの伝記です。まずは、彼女の経歴を追ってみましょう。

ロックフェラーを助けてスタンダード石油を興した祖父から巨万の富を引き継ぎ、結婚と離婚を繰り返す美貌の母親とは不仲となる一方で、17歳の時にオスカー・ワイルドの姪によってレズビアンに目覚めまず。第一次世界大戦中に救急車の運転を務めた経験から、戦後に女性だけのハイヤー会社を設立したり、国際モーターボートレースの代表となって一世を風靡。

しかし男勝りの女性に対する風向きが変わった1930年代になって、世界の表舞台から姿を消し、バハマ諸島の小島を購入。その島こそ彼女の「ネヴァーランド」であり、島のインフラを整備したり、産業を興したりしながら、「女王」として40年も君臨し続けるのです。その間、若く美しい女性たちを何人も島に連れ込み、記念として残した愛人の写真は120枚にのぼるとのこと。1975年に島を売却してからの晩年はフロリダで暮らしたそうです。

なんとも凄い女性ですが、著者は彼女のわかりにくさを解釈することなく、かなりストレートに記述しています。「トッド・ウォドリー卿」と名付けた人形を生涯の伴侶として扱ったという痛々しさや、島民に対する支配的態度や、数多くの矛盾した言動について、弁護も批判もすることなく淡々と記述していくのです。彼女に対してどのような印象を描くのかは読者に委ねられている一方で、「スケールの大きさ」については誰もが認めることになるのでしょう。これが著者の狙いなのかもしれません。

2018/10