りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

Gマン(スティーヴン・ハンター)

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『極大射程』ベトナム帰りのスナイパーとしてデビューしたボブ・リー・スワガーも、著者と同じ71歳。さすがにもう自分からアクションに踏み込んでいくことはなく、秘められた歴史を掘り起こす物語が、第三の銃弾スナイパーの誇りと三作も続いています。

祖父であるチャールズの遺品と思わしきコルト45や、1934年のみ用いられた司法省捜査局(FBIの前身)のバッジなどが発見され、ボブ・リーは祖父が隠していた秘密に迫って行きます。その年は、ボニーとクライド、ジョン・デリンジャー、ベビーフェイス・ネルソンなどのギャングが、相次いで射殺された年だったのでした。

やはりチャールズは発足当時の司法省捜査局に協力して、司法官たちに射撃を教えるだけでなく、遊軍としてアウトローたちを駆り出す任務に従事していたようなのですが、ではなぜその事実が抹消されてしまったのか。晩年のチャールズは、アルコール浸しの失意の日々を過ごしていたようなのですが、それはなぜなのか。

著者は、司法省捜査局で唯一現実を理解していたサム・カウリーの正義感のみならず、悪役のネルソンと妻ヘレンの刹那的な愛情関係をも、淡々と描いていきます。著者は、こういう人物を描かせると上手いですね。不必要なロマンを省き、銃をめぐるデティールから判明できることを描いていく姿勢は、銃規制を巡る政治的立場を越えて共感できるものでしょう。

ところで、ボブ・リーの愛娘であるニッキがジャーナリストであることは旧知でしたが、現在は親トランプ派として知られるFOXで働いているようです。調査先のリベラルな夫人からフェイク・ニュースについて皮肉られていましたが、彼女自身は正統派ジャーナリストなのでしょう。

2018/6