りぼんの読書ノート

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スナイパーの誇り(スティーヴン・ハンター)

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第二次大戦末期、ドイツ軍から「白い魔女」と呼ばれて怖れられていた狙撃手のリュドミラ・ペトロワの記録が抹殺されているのは何故なのか。その事実を調べ始めたモスクワ駐在記者のキャシーは、親友のボブ・リー・スワガーに相談して、共に調査を開始します。

赤軍高官からナチス高官射殺を命じられていたリュドミラの跡を追って、ウクライナに向かった2人でしたが、何者かによって命を狙われてしまいます。いったい70年も前の事件の調査に、誰が危機感を抱いたのか。その一方でリュドミラは任務に成功していたのか。なぜ姿を消してしまったのか。

第2次大戦期に赤軍内部にいたスパイによって、ナチスドイツとスターリン独裁起のソ連という史上最悪の2つの国家によって命を狙われた「白い魔女」の運命に隠された秘話と、現代にも続いている過去の亡霊の物語が、重層的にしかもスリリングに進んでいく展開は、著者の面目躍如たるところですね。現在の章で生まれた疑問を、次の過去の章で明かしていく手法が効果的です。ドイツとソ連の両方に、彼女の魅力に惹かれた協力者がいたはずというのですが・・。

ベトナム戦争で「伝説のスナイパー」となったボブもすでに68歳ですが、同年齢の著者がさまざまな分野に関心を示し続ける限り、まだまだ活躍は続きそうです。ボブのキャラクターが魅力的なだけに、銃を持って身を守るというアメリカ人気質から脱却して欲しいものですが、著者の信念やこのシリーズの読者層を考えると無理なのでしょう。ひそかに、最終巻でボブが銃を捨てるというラストを期待しているのですが・・。

2018/3