りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ガール・セヴン(ハンナ・ジェイミスン)

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主人公は日英ハーフの21歳の女性、石田清美。通称セブン。3年前に何者かに家族を惨殺された後、ロンドンの底辺にあるナイトクラブで働きながら、クラブの経営者ノエルの愛人的存在となっています。彼女の望みは、何とかどん底生活から抜け出して東京に帰り、昔の友人と再会すること。

そんなセブンに2つの転機が訪れます。ひとつはノエルに紹介された殺し屋マークが、家族が殺害された事件の真相を突き止める約束をしてくれたこと。もうひとつはロシア人の客に見栄を張ったことから、ノエルの財産を盗み出す手先となることを強制されてしまったこと。彼女は復讐を果たすと同時に、残虐なロシア人ギャングの手から逃れることはできるのでしょうか。そして彼女は、地獄のような生活を抜け出して東京に帰ることができるのでしょうか。

「わたしは山頂に座っている」とのイメージを抱くことによって平常心を保とうとするセブンは、「怒り」を原動力とする暴力的な衝動に駆られながらも、求道的な武芸者であろうとしているかのようです。その資質は、彼女に危機を乗り越えさせる一方で、ダークな世界に嵌りこむリスクともなっているのです。

24歳の女性作家によるノワールは、ボストン・テランの音もなく少女はと比較する声もあるようですが、はっきり言ってそこまでの深みはありません。ただし若い女性作家が描く、若い女性の暴力的な衝動には、粗削りな迫力を感じます。

2018/2