りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

裸の華(桜木紫乃)

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怪我で引退した元ストリッパーのノリカは、故郷札幌に戻って、ススキノでダンスシアターを備えたバーを開くことを決意します。見せるものは裸ではなくダンス。ワケありのバーテンダーと、個性の異なる2人の若いダンサーを雇い、トレーニングを重ねて開店。クチコミで評判は広がり、徐々に客も増えていくのですが・・。

ステージの上から客を魅了するという意味では、ストリップダンスと正統派ダンスの間に違いはないのかもしれません。映画「素顔のままで(Striptease)」でポールダンスを魅せてくれたデミ・ムーアを思い出しました。客席を黙らせる浄土みのりと、客席を和ませる桂木瑞穂の2人のダンサーが、ノリカを師と仰いで経験を積んでいくことに違和感はありません。

しかし、このままハッピーエンドになる物語ではありません。天分に溢れたみのりに対するスターダムからの勧誘と、優しい伴侶を見つけた瑞穂の妊娠が明らかになった時、ノリカはある決意をするのです。それには、失踪していたノリカの師匠が場末の温泉街で老醜の身体をさらしながら、生涯現役ストリッパーであり続ける姿に触れたことも影響しているのでしょう。

著者の小説にストリッパーが登場するのは、初めてではありません。しかしその多くは、生活苦とか零落というテキストの中で描かれたものであり、「師匠から弟子につなぐ踊り子の矜持」というテーマを前面に出した作品は初めてのように思います。

著者はストリッパーについて「お客さんの恥を引き受ける存在」でありながら「客を満足させるという意味では舞台も小説も同じ」という趣旨のことを述べています。本書のラストには賛否あるでしょうが、著者の思いが伝わってくる作品でした。

2017/12