りぼんの読書ノート

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テスタメントシュピーゲル 3上(冲方丁)

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世界中のテロが交差する近未来都市ウィーンで、機械化された特甲少女たちの闘いを描くシュピーゲル・シリーズ」は、著者の最後のライトノベルになるとのこと。「黒犬・涼月、赤犬・陽炎、白犬・夕霧」らの活躍を描くオイレンシリーズと、「紫火・鳳(アゲハ)、青火・乙(ツバメ)、黄火・雛(ヒビナ)」らの活躍を描くスプライトシリーズを融合した完結編「テスタメントシリーズ」の最終章が、ついに開始されました。

前巻までの展開で、6人の特甲少女たちは、それぞれ切り離されてしまっています。ロートヴィルトの指揮するテロリストに攻囲されたミレニアムタワーで孤立した陽炎。ウィーン中央墓地でホイテロートの罠にかかった政府軍とともに奮戦する乙。サードアイとシャーリーンによる大量情報汚染に対峙する夕霧。「レベル3」の虚無に飲み込まれてしまった鳳を追い、仲間たちとの接触を絶って地下に潜って行く雛。そして虚無への耐性を備えた涼月は、2トンのダイヤを燃やしながら疾走する蒸気機関車に乗って、仲間のもとへと向かいます。

そしてついに、やはり虚無に飲み込まれてテロリストたちの手先となっている特甲猟兵たちや、犠脳兵器らの攻撃をかいくぐって、涼月、陽炎、夕霧、乙、雛は集結。情報戦からは一番遠い所にいた涼月が、すべてのハブとなっていることも、明らかになりました。そして今や敵側のラスボスとなってしまった感のある鳳と対峙するに至ります。涼月が鳳に「よう、あたくし様」と呼びかける、本シリーズ冒頭の場面ですね、

昏睡に陥っている接続官・吹雪は復活できるのか、陽炎はロートヴィルトと、乙はホイテロートと、それぞれの因縁に決着をつけられるのか。「プリンチップ社」のトラクルを追って失踪した初期メンバーの蛍と皇はどうなるのか。自らウィルスとなって敵の手に落ちた「太公望」の作戦は功を奏するのか。えげつない特甲猟兵らには、まだ救済の余地があるのか。全ては、鳳を虚無から取り戻せるかどうかにかかってきているようです。

全てを殴り倒していく涼月のシンプルさは好きですが、剣の道を究めていくような乙が魅力的ですね。もちろん、ニヒル乙女の陽炎、天真爛漫な夕霧、自閉症娘の雛、お姫様キャラの鳳が全員揃ってこその「シュピーゲル」。実は昨年夏の旅行でウィーンを再訪したのは、この作品の影響もあるのです。

これまでの世界観が維持されるにせよ、覆されるにせよ、最終巻の出版をワクワクしながら待つことになりそうです。でも、あまり待たずに済んでほしいもの。とにかく登場人物が多くて、思い出すまでが一苦労なのです。コマ送りのようなビジョンの表現が多用されているため、活字数よりもはるかにボリュームのある内容でもありますし。

2017/5