りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ダイエット(フランソワーズ・マレ=ジョリス)

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パリの高校で自然科学を教えているジャンヌは、35歳の独身女性。身長170センチで体重85キロと、見るからに肥満なのですが、自分の体形を気にしたことなどありませんでした。読書家で美食家である彼女は、校長のエリザベスからも、男女の友人たちからも信頼される存在だったのです。

ところが、彼女が32階に住んでいる高層マンションのエレベーターが故障したことから、生活が一変してしまいます。隣人や友人の全員が、彼女の身体を気遣っていることに気付いてしまったのです。敢然と713段の階段を歩いて降りたジャンヌでしたが、精も根も尽き果てて疲労困憊となり、敗北感に打ちひしがれてしまったのです。かくしてダイエットを決意したのですが・・。

途中でくじけそうになったものの、ダイエットそのものは成功するのです。毎日測る体重は、80・・75・・69kgと、目に見えて成果が現れたのですが、完全に想定外だったのはそれが人間関係にまで影響してきたこと。

次第にほっそりしてきたジャンヌに対し、女性の友人は恋愛を疑い、男性の友人は結婚願望を疑い、母親は娘をライバル視しはじめ、知人たちは彼女が肥満にコンプレックスを抱いていたに違いないと想像し、皆一様にダイエットの辛さを克服する精神力を褒め称えながら、彼女と距離を置くようになっていくのです。そして、そういった周囲の視線を感じたジャンヌ自身が、次第に他人に対して不寛容になっていくのでした。

「哲学的ダイエット小説」と帯にありましたが、何かを克服した人は、他人にコンプレックスを与えるようです。ネットで自分の幸福をアピールすると、炎上してしまうようなものでしょうか。ジャンヌは全然アピールなどしなかったのですけれど。それにしても、まさかフランスで社会的問題になった「女子学生のイスラム・ベール着用禁止」まで関連してくるとは、思ってもいませんでした。

2017/5