『都市と都市』や『言語都市』などの作品によって、現代的なSF作家とされる著者ですが、もともとは「ニュー・ウィアード」と称する怪奇的幻想小説の書き手であり、本人もそう自称しているとのこと。多種多様な28もの短編が収録されている本書ですが、ざっくりと分類してみました。とうてい全ての作品を紹介するわけにはいきませんが、著者の奇想の一端に触れてみてください。
「奇病をテーマにした作品」'
「キープ」:存在しているだけで地表を穿っていくという奇妙な伝染性疾患によって、地球が滅びようとしている中で、免疫力を備えた主人公は「病気なのは世界なのでは?」と問いかけるものの、もちろん答えはありません。
「キープ」:存在しているだけで地表を穿っていくという奇妙な伝染性疾患によって、地球が滅びようとしている中で、免疫力を備えた主人公は「病気なのは世界なのでは?」と問いかけるものの、もちろん答えはありません。
「バスタード・プロンプト」:模擬診察で患者役を演じる女優が訴えるありえない症状が、現実の病気として発生していきます。
「物質の意志をテーマにした作品」
「土埃まみれの帽子」:主人公にオルグをかけてきたのは、なんと土埃。地球が始まってからずっと続いている、物質間の党派闘争において、人類はどの党派に属することになるのでしょう。
「土埃まみれの帽子」:主人公にオルグをかけてきたのは、なんと土埃。地球が始まってからずっと続いている、物質間の党派闘争において、人類はどの党派に属することになるのでしょう。
「コブハイズ」:かつて海中に沈んだ海洋プラットフォームが上陸して人間を襲うだけでも不気味なのに、なんと産卵までしてしまうのです。
このグループに分類された作品には、『クラーケン』と共通するものを感じます。
「ホラー的な作品」
「ゼッケン」:中世にあったという、人間を動物たちと一緒の袋に詰めて湖に沈めるという処刑方法。袋の中で一体化した存在は、欠落したものを求めているようです。
「ゼッケン」:中世にあったという、人間を動物たちと一緒の袋に詰めて湖に沈めるという処刑方法。袋の中で一体化した存在は、欠落したものを求めているようです。
「祝祭のあと」:祝祭で豚の頭をかぶせられた男が罹ったのは、寄生虫による疾患だけではなさそうです。ワニの頭を被った男性は回復したものの、彼の一部はまだどこかに潜んでいるのかもしれません。
「山腹にて」:ポンペイと同様に火山灰に埋もれた村で、空洞から復元されたものは、人類だけではなかったようです。
「デザイン」:解剖された男の骨に刻まれていたスケッチは、誰が、何のために、どのようにして描いたものなのでしょう?
「SF的な作品」
「爆発の三つの欠片」:瞬間に消え去る破壊芸術を、主観時間でゆっくりと楽しむためのドラッグが開発されています。彼らは、永遠に続く崩壊を愛で続けることができるのでしょうか。
「爆発の三つの欠片」:瞬間に消え去る破壊芸術を、主観時間でゆっくりと楽しむためのドラッグが開発されています。彼らは、永遠に続く崩壊を愛で続けることができるのでしょうか。
「恐ろしい結末」:行動主義的セラピストには、患者を救うために悩みの原因の排除も許容されている社会。DV男性やストーカーは、暗い夜道を歩く時には注意しないといけません。
「脱出者」:生産ラインと一体化されて逃れられない者たちは、どうやって脱出するのでしょう。
「シラバス」:世界は時間旅行者が残したごみであふれているそうです。「ベンチとは本来何だったのか?」という問いがいいですね。
2017/5