りぼんの読書ノート

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宿神 第2巻(夢枕獏)

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西行を主役に据えた全4巻の大河伝奇小説の第2巻では、北面の武士であった佐藤義清の出家がクライマックスになります。

忘れ得ぬ禁断の一夜を過ごした待賢門院璋子に対する激しい恋情を断ち切れない義清ですが、しょせんは禁断の恋。待賢門院から決別を言い渡された義清は、鳥羽上皇の御前で襖絵に沿える和歌を即興で書きなぐります。それは御簾の陰に潜む待賢門院に対する、心の奥底からほとばしり出る真情にほかなりません。そして御所からの帰途、いきなり出家してしまうのです。この時23歳。

一方で、時代は混沌を極めていきます。白川法王の死後、鳥羽上皇は実父・白河法王が待賢門院に生ませた子と噂があった崇徳天皇を退位させ、美福門院との間に設けた近衛天皇を即位させます。追い打ちをかけるように呪詛の冤罪がかけられた待賢門院は出家。そして病に伏せるとこになります。を一方で、後の保元の乱の一因となった摂関家の内紛も綴られますが、このあたりはバックグラウンド。

義清こと西行は「宿神」を意識し続けています。しかし、宿神は何もしない存在にすぎません。何かを起こすのは、宿神を見ることができようができまいが、宿神を祀り、怖れ、敬い、感じる人間たちなのです。親友同士でありながら、権力闘争の中に飛び込んでいく清盛と、そこから身を引きつつも煩悩からは逃れられない義清こと西行は、道を違えていくのでしょうか。

2017/5