りぼんの読書ノート

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帝冠の恋(須賀しのぶ)

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まだナポレオン戦争の記憶も新しい1824年。ハプスブルク家のフランツ・カール大公に嫁ぎ、やがてフランツ・ヨーゼフ1世の母親となるゾフィーを主人公とする、王宮政治と愛の物語。ゾフィーというと、後に息子の嫁になるエリザベート・シシィを苛めた意地悪な姑という印象が強いのですが、かなり聡明で奔放な女性だったようです。

バイエルン王室からゾフィーが嫁いできた頃、ハプスブルク家のフランツ2世は統治するのみで、実験を握っていたのは宰相メッテルニヒ。フランツ2世の息子たちは、ゾフィーの夫であるフランツ・カール大公も含めて皇帝の器ではないことも周知の事実。ゾフィーにははじめから、次の皇帝を生むことが期待されていたわけです。

しかし聡明なゾフィーは、そんな役割だけに押しこめられていませんでした。メッテルニヒと対等に渡り合って政治に影響を与えていたことは、後に息子フランツ・ヨーゼフ1世が即位すると実権を握り「宮廷内で唯一の本物の男性」と呼ばれるに至ったことでも明らかですね。

しかし著者は、彼女に奔放さも与えます。恋の相手はなんとナポレオンの息子フランツ。ナポレオン没落後、母親マリー・ルイーズとともにウィーンに戻されたフランツが、宮廷内で「腫れ物」扱いだったことは想像に難くありません。肖像画を見るとかなりの美少年。しかも病弱で結核とくると、まるで韓国ドラマのヒロインのよう。この2人が一線を越えて・・というのが本書のハイライトですね。

このストーリーは100%フィクションではないかと疑ったのですが、ゾフィーの次男である「フェルデナント・マクシミリアン・ヨーゼフ」をwikipediaで検索してみてぶっ飛びました。著者の最後のラノベになった本書は、渾身の作品です。

2017/4