りぼんの読書ノート

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波に舞ふ舞ふ 平清盛(瀬川貴次)

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後に太政大臣へと上り詰めて平氏の天下を築いた平清盛の青春時代を、出生の秘密を知った苦しみと、彼を取り巻く女性たちとの関係から描いた作品です。

伊勢平氏の頭領・平忠盛の長男として生まれた清盛が、実は白河法皇の御落胤ではないかという説があることは有名です。本書では清盛の生母を祇園女御の妹としていますが、それが誰にせよ白河院に仕えた女房であったことは間違いなく、清盛の例外的な出世の速さもあって、当時から噂になっていたとのこと。

青年になってからその事実を知った清盛は、悩み苦しみます。しかし、彼を救ったのは賢明な女性たちでした。彼に分け隔てない愛情を注いだ義母の宗子。彼の最初の妻となる高階基章の娘・佐用。清盛を少女時代から慕い続け、佐用の早逝後に後妻となる時子。そして著者が本書の核に据えた、厳島神社の女神。

清盛18歳の時の海賊退治の戦いの際、水先案内を買って出て命を落とした厳島神社宮司の娘の姿で登場する女神のイメージは、何度も決定的な場面で登場することになります。中でも、親友の佐藤則清(後の西行)とともに、待賢門院璋子の魔手に落ちる寸前の登場は印象的でした。やがて女神は、平家一門に繁栄をもたらす時子に祝福を与えることになります。最後には呼び戻すのですが・・。

若き源義朝後白河天皇(待賢門院璋子の息子)との交流も含めて、青年時代の清盛が成長していく姿を鮮やかに描いた作品でした。

2017/4