りぼんの読書ノート

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マトリョーシカと消えた死体(ケイト・アトキンソン)

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探偵ブロディの事件ファイルの続編ですが、前作を読んでいなくても大丈夫でしょう。バツイチ中年男性で、財産の遺贈を受けてフランスで悠々自適の生活をしているブロディは、前作で出会った「こじらせ女子」の女優ジュリアと恋愛中。ジュリアが出演する国際フェスティバルを見るために訪れたエディンバラで、不思議な事件と遭遇してしまいます。

追突事故とそれに続く暴力沙汰を目撃したブロディは、関わり合いになりたくないので、速やかにその場を離脱。しかし、そこに居合わせた者たちは、本人たちも知らない間に関係しあっており、この日を境に運命が変わっていくのです。

暴力事件の被害者も加害者も謎の人物なのですが、被害者を助けたミステリ作家のマーティンは、同居している芸人リチャードが殺害されているのを発見。事件を見ていた悪徳不動産業者の妻グロリアは、夫が倒れたという連絡を受け、万引き少年アーチーのシングルマザーで警官のルイーズは、この事件を担当。そしてブロディは、海岸で若い女性の死体を発見するのです。

どうやら、不動産業者が倒れた時に相手をしていたコールガールと、マーティンの家でリチャードの死体を発見した清掃業者のメイドと、ブロディが死体で発見した女性は、皆ロシア系であることは、偶然ではなさそうです。

最後にはもちろん、被害者と加害者の正体を含めて、各人が抱えていた事件のリンクがそれなりに明確になるのですが、全部すっきりとはいかないのがこの著者らしい点ですね。マーティンの旧悪は咎めを受けないし、ブロディは最後にショッキングな事実を知らされますし。目的を果たしてハッピーなのはグロリアだけ?

物語はマトリョーショカのような入れ子構造ではなく、ウロボロスの蛇のような円環構造になっていて、ひところの伊坂幸太郎さんの作品のようです。探偵ブロディが登場する作品は、あと2作あるようですが、早期の翻訳を期待しましょう。博物館の裏庭で世界が終わるわけではなくを読んだ時には、まさかこの人が推理小説を書くとは思いもしませんでした。

2017/3