りぼんの読書ノート

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炎路を行く者(上橋菜穂子)

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守り人シリーズの外伝である本書には、タルシュ帝国の密偵として本編に登場したヨゴ人のアラユタン・ヒュウゴの少年時代を描いた「炎路の旅人」と、バルサの回想の物語「十五の我には」の2編が収録されています。

タルシュ帝国に敗れたヨゴ皇国では、反逆の芽を摘むために高級武人の家族は皆殺しにされていました。「王の盾」の家の長男でありながら漁師の娘リュアンに助けられ、身を潜めて生き延びてきたヒュウゴ少年は、やがて被征服民族であるヨゴの民を救うためにタルシュ軍に入る決意をするのです、著者は、この物語が生まれたことが「守り人シリーズ」に大河物語としての姿を与えたと述べています。タルシュ帝国というものが、単なる侵略者から、歴史と奥行を持った複眼視点のひとつになったということなのでしょう。外伝となったが故に、出版時期が遅れたというのは仕方ありませんね。

併録されているのは、女用心棒のバルサが、思春期の自分を回想する物語。亡き父親の親友でバルサの保護者となり、地位も名誉も捨てたジグロに負い目を感じていたバルサは、早く独り立ちをしようと焦るのですが・・。回想している時点は、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムが同盟軍を率いて出兵する前夜です。わずか17歳で国家の運命を担う皇子への想いが、過去の自分を思い起こさせたのでした。

本編の奥行きを増すためにも、本書のような「外伝」の更なる出版を期待しています。1月末からは、NHKドラマの「シーズン2」が始まりました。綾瀬はるかバルサを演じることには不安があったのですが、意外とはまっていますね。

2017/2