りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

酔ひもせず(田牧大和)

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副題は「其角と一蝶」。同時代に生きた俳人宝井其角と、絵師・英一蝶は、実際に深く交流していたようです。其角が狂雷堂、一蝶が狂雲堂という別号を持っていたことからも、そのことはうかがい知れますね。この2人は、夢枕獏大江戸釣客伝にも登場していました。

さて本書です。芭蕉の一番弟子でありながら派手な作風の其角は、不思議と馬が合う豪放磊落な町絵師・一蝶とともに吉原の花房太夫から依頼を受けることになります。多彩多芸な一蝶は、吉原の幇間でもあったのですね。その背景に悲しい理由があったことは、ラスト近くで明かされることになります。

太夫の依頼とは、屏風に描かれた犬が動くところを見た遊女が次々と失踪しているという謎を解いて、女たちを付けて欲しいというものでした。やがて、花房太夫自身も姿を消し、2人目に失踪した遊女が死体で発見されるに至って、物語は緊迫の度合いを増していきます。2人が解いた謎は、権力者に翻弄される遊女たちの悲しい現実そのものだったのですが、そこは派手にやり返すのでお楽しみに。もちろん現実の枠内での物語なのですが・・。

理論派ながら他人の気持ちを傷つける言い方をしてしまう年下の其角と、直感派で人間力が強い年上の一蝶は、いいコンビですね。友情物語としても読める作品です。さすがに「其角×一蝶」というBL関係ではないとは思いますけれど。

2017/1