りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

書店ガール4(碧野圭)

イメージ 1

ドラマ化されたTV番組の視聴率は冴えなかったようですが、知名度がアップした原作は売れ始めたようで何よりです。新興堂書店の東日本統括エリアマネーカーとなった西岡理子と、本部のマーチャン・ダイジング部勤務となった小幡亜紀に代わって、シリーズ4作めでは若い世代の女性たちが主人公になっていきます。ただし、出番はわずかながら、理子と亜紀もそれぞれ登場場面ではビシッと決めてくれます。

ひとりは、新興堂の吉祥寺店でバイト店員として働く大学生の高梨愛奈。書店ガール3では、亜紀に憧れて行動力を発揮していた愛奈は、就職活動期を迎えて自分の進路に迷っています。

もうひとりは、吉祥寺駅ビルに入居する大手書店の契約社員の宮崎彩加。やはり『書店ガール3』に登場しており、書店の垣根を越えて亜紀や愛奈とともに若手作家の売り込みに協力していました。入社5年目で正社員への登用と小規模な取手駅ナカ店の店長任命を打診された彩加のもとに、地元で伯母が営む書店を手伝って欲しいとの依頼が舞い込んできます。

著者は、主人公を交代させたことについて「もう一度書店の現場の話を書いてみたかったから」と述べています。大量に新刊書が現れて消えていく現実や、地方の小規模書店の経営という大きな問題に加えて、クレーマー、万引き、書店員間の不和などの現場の問題や、お客様の期待に応えた歓びも描かれていきます。

「実際の書店の現場はもっと厳しい」との声もあるようですが、書店も出版も斜陽産業であるからこそ、ささやかな成功が必要なのでしょう。失敗続きで気落ちした愛奈は、彩加に叱咤されてやる気を取り戻し、書店バイトの集大成としてのブックフェア「就活を考える」を提案。一方の彩加も、伯母の書店を遠距離で支援することにして、取手へと向かいます。しかも2人とも、気になる男性が現れた模様。

TVドラマ化を進めたプロデューサーの山下有為氏が、本書の解説で「名も無き書店員のおかげで、私たちは様々な本に出会い、その世界に影響を受ける。ネット書店では味わえない出会いが、リアル書店にはある」と述べています。あらためて続編の企画を検討して欲しいものです。

2017/1