りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

レモン畑の吸血鬼(カレン・ラッセル)

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狼少女たちの聖ルーシー寮の著者による、第2短編集です。奇妙で残酷なダーク・ファンタジーぶりに、一段と磨きがかかっているようです。

「レモン畑の吸血鬼」
イタリアでレモン畑を所有する老人は、実は吸血鬼でした。連れ合いになった吸血鬼の女性から、レモンの酸味で生きていけることを教えてもらったのですが、そのような平和な営みは永続できるのでしょうか。永遠の生の中では、倦怠期も訪れるようです。

「お国のための糸繰り」
明治期の日本。お国のために製糸工場に集められた女性たちは、カラフルな糸を繰り出す存在へと変身していきます。「女工哀史」の世界が、耽美でダークなファンタジーになってしまいました。

「一九七九年、カモメ軍団、ストロング・ビーチを襲う」
母親が職を失い、片思いの少女が不実な兄と付き合い始め、鬱々とした少年は、街に襲来したカモメの大群の巣を見つけます。巣の中には、カモメたちがため込んでいた未来の断片がありました。

「証明」
西部開拓時代。監査官に土地所有を「証明」してもらうために必要な「ガラスの窓」は、何軒かの共有物でした。少年は父親から、監査官の先回りをして窓を運ぶという重要な役目を頼まれるのですが・・。スティーブン・キングの作品のような怖さを感じる作品です。

「帰還兵」
魔術的な技を用いる中年女性のマッサージ師は、PTSDを抱えたイラク帰りの若い兵士を癒すことができるのでしょうか。マッサージャーの語りも、若い兵士の記憶も、信用できない」のですが・・。

「エリック・ミューティスの墓なし人形」
不気味な案山子を発見した4人組の少年は、昔いじめた少年のことを思い出していくのですが、そもそもなぜ忘れていたのでしょう。ダークな「スタンド・バイ・ミー」のような作品です。

他には、なぜか歴代のアメリカ大統領たちが馬に転生しているという「任期終わりの厩(うまや)」、南極でクジラやオキアミらが「食物連鎖対戦」を闘っているという「ダグバート・シャックルトンの南極観戦注意事項」が収録されています。

2016/12