妻の葵上に取り憑いた妖しいものとは何だったのか。類まれなる美貌と宿縁を併せ持った貴公子・光の君は、妖しい外法の陰陽師・蘆屋道満に依頼を持ちかけます。彼らが見出したものは、一般に伝えられている「六条御息所の生霊」を超えたものだったのです。
弥勒菩薩半跏像を据えて太秦の広隆寺を開いた秦氏が、同時に他の神仏を持ち込んでいたのではないかとの発想は、意表を衝いてくれました。詳細な時代考証はさておき、盛唐時代にシルクロード経由で正倉院の御物が伝わったことを思えば、はるか西域の神々が古代日本にいても不思議ではありません。
しかし葵上に取り憑いたものの正体は、西域の神々ではなかったのです。そこに必然性はありませんからね。最後にたどり着いた結論は、綺麗に纏まりました。もちろん、葵上を救うなどという、『源氏物語』の構造自体を揺るがすようなことはできなかったのですが・・。
2016/12