りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ナイルパーチの女子会(柚木麻子)

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大手商社に勤める30歳のキャリアウーマン・栄利子は、海外淡水魚の輸入に携わっています。その関係で、外来種ナイルパーチが他の種を食べつくして生態系を破壊し、駆除対象とされていることを知って、気の毒に思います。ナイルパーチだって、他の生態系に輸出されて他種の魚と出会うことがなければ、自分の凶暴性に気付くことなどなかったろうと。

一方で昔から優等生であった栄利子は、「女子会」的な群れる関係を軽蔑していながら、「女ともだち」を得ることを渇望しているという矛盾した、しかも振幅の大きな感情を抱いていたのです。そんな彼女が、飾らず焦らず自然体での暮らしを綴っている同い年の主婦ブロガー「おひょう」こと翔子と出会って、癒されます。

正反対の性格ながら、互いに理想の友人を得たと思った2人でしたが、物語は意外な方向に進んでいきます。執着心の強い栄利子と、心の奥に屈託を抱えていた祥子の関係は、決して友情とは言えないものへと変質していくのでした。さらに2人は、周囲との関係も悪化させていき、それぞれ抜き差しならない状況へと落ちこんでしまうのですが・・。

自立した女性たちの友情物語であるあまからカルテットや、変質した友情の復活を描いた本屋さんのダイアナの著者ですから、「女性同志の友情」というものを、相当に意識しているのでしょう。その中でも、この作品が含んでいる「毒」はかなりのレベル。女性同志に限らず、人間関係とはなんと多様で難しいもの!

2016/10