りぼんの読書ノート

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結婚式のメンバー(カーソン・マッカラーズ)

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20世紀半ばのアメリカ南部の風土を舞台にした傑作が、村上春樹さんの新訳で復活。南部の田舎町で、父と従弟と女料理人と暮らす日常に倦んだ、多感で孤独な少女の心理が、みずみずしく描かれた作品です。

むせかえるような緑色の夏。12歳の少女フランキーは、遠く離れた町で暮らす兄が結婚するという知らせを聞いて、人生が変わることを夢見るのです。「この街を出て、永遠にどこかへ行ってしまいたい」という彼女の想いは、彼女に奇矯な行動を取らせるのですが・・。

村上さんは、本書は「一般的な少女の通過儀礼を描いた小説ではない」と述べています。かつて南部の田舎町で12歳の少女であった著者自身が、その後何年もかけて真剣に追い続け、彼女の中では「そのまま生きて継続している物語」であったというのです。だからこそ本書は「力強さ」を保ち続けているのだと。

林芙美子さんの放浪記を思い浮かべました。村上さんが本書について語った言葉は、そのまま『放浪記』にも当てはまると思うのです。どちらも、時代を経ても「力強さ」と「みずみずしさ」を失っていない「奇跡の作品」です。

2016/10