りぼんの読書ノート

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アイネクライネナハトムジーク(伊坂幸太郎)

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19年という長い年月の間に育まれた、複雑な人物相関送を楽しむ作品のようですが、まずは6編の連作短編の内容を紹介しておきましょう。

「アイネクライネ」
妻子に逃げられた先輩のミスのとばっちりで、街頭アンケートをさせられているマーケットリサーチ会社勤務の佐藤は、ひとりの女性と出会います。それは運命の出会いが起きた瞬間だったのでしょうか。彼の友人の織田一真は、いい加減な性格なのに、皆の憧れであった由美と結ばれていたのですが。その晩、日本人のヘビー級チャンピオンが誕生します。

「ライトヘビー」
美容師の美奈子は、我の強い馴染み客の板橋香澄の弟・学と、電話で会話するようになります。どうやら弟は、プロポーズを計画しているようなのですが、ボクシングの試合結果次第という他力本願ぶりにはガッカリ。しかしジムの仕事をしているという学は、その当事者だったのです。

ドクメンタ
藤間が妻子に家出された理由は、大切なことをギリギリまでやらない性格にあったようです。5年ごとの免許更新ギリギリの日曜に必ず出会っていた女性は、同じ性格で似た境遇にあるようなのですが、彼女から不思議なアドバイスをもらいます。それは預金通帳を定期的に記入するということだったのですが・・。

「ルックスライク」
高校生になっていた織田一真の娘・美緒に頼まれて、駐輪場のチケット盗難犯人を捜していた同級生の久留米和人は、犯人をつきとめたものの逆に凄まれてしまいます。彼らを救ったのは、担任の深掘朱美先生でした。彼女は学生時代、バイト中のトラブルを邦彦という青年に助けてもらったことがあったのです。邦彦と和人がそっくりなのには、もちろん理由がありました。

「メイクアップ」
化粧品会社の広報勤務の窪田結衣は、学生時代のいじめっ子・小久保亜紀と仕事で再会。外見も苗字もかわっている結衣に亜紀は気づかないのですが、性格は昔のままのようです。はたして復讐劇はなされるのでしょうか。ちなみに結衣の頼れる上司は、美奈子の友人で「仕事に生きる」と宣言していた山田寛子でした。

「ナハトムジーク」
19年前、奇跡的にヘビー級チャンピオンとなった学でしたが、翌年の防衛戦で完敗。9年前には再挑戦を果たしたのですが・・。第1話から19年を経て語られる物語は、これまでの5つの物語の関係を解き明かしてくれます。

もともと本書の冒頭の2話は、著者がファンであるという、シンガーソングライター斉藤和義の新曲のために書き下ろされたものだそうです。小説をもとにして曲が作られ、曲の世界をまた続編が広げていくという関係ですね。本書の全体が、「君は僕のなにを好きになったんだろう」という歌詞への回答になっているようです。

2016/8