りぼんの読書ノート

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好色一代男(島田雅彦訳)日本文学全集11

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池澤夏樹編「日本文学全集11巻」は、江戸文学です。冒頭を飾るのは、島田雅彦さんの新訳による江戸中期の浮世草子で、井原西鶴著『好色一代男』。

モテ男の代名詞となっている「世之介」の性的放浪記は、全54章。これは「源氏物語54帖」にちなんでいます。この間に手をつけた女が3742人で、男が725人というから、4日に1人のペース!

7歳の時に乳母に手を出したのを手始めにして、江戸近辺で放蕩三昧。19歳で父親から勘当されてからは、諸国を放浪しながらの色道修行。貧窮に陥ったところで人生の大逆転。父親が亡くなって500億円の遺産を相続したのが35歳の時。江戸の吉原、京の島原、長崎の丸山などの遊郭に実在した高名な遊女たちと浮名を流し続け、60歳で女護島を目指して船出する場面でエンディング。

この時代、色恋沙汰といっても遊女の比率が高いのですね。とりわけ後半は、ほとんど「遊女列伝」のようです。これについては島田雅彦さんが「この時代、女はお金の象徴だ」と、かなり明け透けに述べています。真情を寄せてくれた女性を次々に使い捨てることに世之介の良心が痛むことがないのは、大半が「郭での疑似恋愛」だからなのですね。その意味でも、江戸時代も80年がすぎて、商品経済が発達した元禄時代を象徴する作品なのでしょう。

2016/8