宮部みゆきさんの『荒神』が新聞連載されていたときの挿絵を描いたこうの史代さんが、「昭和の絵物語」のように書き下ろした「絵巻」です。全403点+αの挿絵が、全部オールカラーで収録されているという贅沢さ。
語り口は変わったものの、もちろんストーリーは変わっていません。元禄時代の東北の山間に現れた怪物の不気味さや、隣り合いながら互いを敵視する2つの藩の人々の様子など、挿絵がついたことでイメージがクリアになりました。はじめから主役を「朱音」に設定したことも、成功しているように思えます。表紙も彼女のアップですしね。
いかにも宮部さんの作品らしく、人々の思いが因果を断ち切るような展開なのですが、実は本編を読んだ時には少々不満を感じたのです。最後の展開が、少々ご都合主義的に思えましたので。ただし「絵物語」としては、このストーリーで正解ですね。明快さがいいのです。歯切れ良い文章も、挿絵と見事にマッチしていました。
2016/8