りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

文学会議(セサル・アイラ

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「アルゼンチンの奇才」による2編の中編は、評価を拒む種類の作品ですね。とにかく、ぶっ飛んでいるのです。

まずは表題作。主人公の「セサル・アイラ」が、小説家でありながら、世界征服をたくらむマッド・サイエンティストであるという設定がすごい。しかし、その後の展開はもっとすごいのです。実験的に自分のクローンを作ったものの、もとが自分なので世界征服には役に立ちません。実在する天才文豪のカルロス・フェンテスのクローンであればいいだろうと、文学会議に出席中の彼の細胞を入手するのですが、なぜか現れたのは巨大モスラの幼虫群。かくして「モスラvsアイラ」の闘いが・・。

これだけでも凄いのですが、途中に延々と、かつて愛した女性の思い出話が入っていたりして、とても一筋縄にはいきません。とにかく破壊力抜群なのです。

もう一篇の「試練」も、破壊力では負けていません。やや太り気味で内気な女の子マルシアが、2人のパンク少女に露骨にナンパされるのですが、彼女たちはマルシアを連れて、いきなりスーパーマーケットに強盗に入るのです。それも、愛を証明するための試練として。

何しろ「愛ゆえ」のことなので、凄まじい行為が次々と行われるのです。反抗した男は火だるまにされ、逃げようとした女は首を切り落とされ、最後はスーパーを爆発炎上させて地獄絵図が出現。途中、パンク少女の「マオ」は超絶美少女で、「レーニン」は不美人などとの形容もありますが、マルシアのためらいも含めて、そんなことは、どうでもよくなってきます。

こういう小説は、本当に困ります。「クレストブックス」でなければ、間違いなく読んでいませんね。

2016/7