りぼんの読書ノート

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宇治拾遺物語(町田康訳)日本文学全集8

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町田さんの「超訳」は、本書の中の白眉ですね。よくぞこの人選を思い立ったものです。

「ご婦人方の間でスター」とか、「インディーズ系の僧侶」とか、「前世よりキャリーオーバーした宿業」とか、「あり得ないルックスの鬼」とか、「聖の狂熱のライブ」という独特の表現と、「オレ的には」とか「マジッすか」とか「よかったじゃん」とかいう現代若者言葉の相性は抜群。宮廷社会は地方の中小企業のようだし、鬼の集団などはほとんどヤンキー。とにかく登場人物が皆、小物ぶり全開なのが思いきり笑えるのです。

昔話系の「瘤取り爺さん」、「雀の恩返し」、「わらしべ長者」はどれも最高。芥川龍之介系(?)の「鼻」、「芋粥」、「絵仏師の良秀」では新解釈炸裂。不思議な夢を見て失脚を予言され、後に応天門に放火する伴大納言は謎すぎる人物。

しかしなんといっても面白いのは下ネタ系ですね。僧侶が陰茎を隠して煩悩切除と偽ったのを暴く話や、一生不犯には千刷りは入るのかどうか悩む話や、「チンポとるとる」の術を習おうとする滝口の武士の話や、女に屁をこかれて萎えてしまう話などは、大爆笑ものでした。

古典の概念を変える超訳でした。正確ではないという指摘もされているようですが、芥川龍之介の「創作」だって、一種の超訳だと思います。

2016/7