りぼんの読書ノート

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永遠の始まり 4(ケン・フォレット)

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20世紀をテーマにした「100年3部作」がついに完結を迎えます。第1部の登場人物たちから見て孫の世代にあたる主人公たちは、冷戦が終結に向かう中で、どのような役割を果たしていくのでしょうか。

アメリカでは、ケネディ兄弟やキング牧師が暗殺された後、いったんは政治の世界を離れたジョージでしたが、政治の世界に再び戻ってきます。ただし今度は誰かのスタッフではなく、自分自身が下院議員となって。ウォーターゲイトやコントラ事件の際には批判者だったジョージは、アメリカの外交戦略を冷戦の終結に向けて大きく舵を切らせる役割を担うことになります。

ソ連では、ゴルバチョフのスタッフとなったディムカが、開放政策を支える役割を担います。ポーランドにおける「連帯」の躍進からハンガリーの国境開放に至る過程で、失脚や生命の危険に怯えながらも、保守派の赤軍を押さえ続けるのです。一方で、タス通信記者の妹ターニャがイギリスの出版社に渡した囚人の手記はベストセラーとなって、ソ連の暗部を世界に暴く役割を果たしました。

ロンドン出身のデイヴと、東ドイツを脱出したギタリストのワリが作ったロックバンドは、解散や麻薬中毒の危機を乗り越えて、定期的に活動を続けています。ワリが東ドイツに残してきた娘アリスに作った曲は、バンドの代表作になりました。西ベルリンでの野外コンサートで父親が歌った曲を、東ドイツで聞いたアリスは、ハンガリー経由での脱出を決意するのです。

そして、ついにベルリンの壁が倒される日を迎えます。

20世紀とは、2つの世界大戦と半世紀近く続いた冷戦という計り知れない苦難の後に、一筋の光明を見出すことができた時代だったのでしょう。21世紀の世界は新たな危機に見舞われ、出口が見えない状態になっていますが、本書の主人公たちの次の世代はどう生きていくのでしょう。それは、まさに、私たちのことなのですが・・。

あえて蛇足的なコメントを記しておくと、本書で描かれたのは、太平洋戦争やベトナム戦争での「敵」を除けば、ほとんど欧米の歴史でした。次の世紀の主役たちは、もっと世界の各地に広がっていくはずです。

2016/7



【100年3部作シリーズ】
巨人たちの落日