タイトルの「グレイヴディッガー」とは「墓堀人」のこと。復讐心から巨悪を付け狙う連続殺人者が、こう呼ばれるのですが、面白いのは主人公が全くの別人であること。自分の薄汚れた人生に区切りをつけるため、骨髄ドナーとなって白血病患者を救おうとしている八神俊彦が、事件に巻き込まれ、容疑者として指名手配を受け、命がけの逃走をする物語。
逃げる八神。彼を追う警察。やはり彼を付け狙う謎の集団。そしてその謎の集団を標的としていく「グレイヴディッガー」。最後まで、誰が誰を何のために付け狙うのか、謎の集団や「グレイヴディッガー」の正体は何なのか、物語の骨格が不明なままで進展する物語は、なかなかスリリング。
もちろん最後には全ての謎は解けるのですが、それまで全く五里霧中の主人公・八神の視点は、読者の視点とイコールなんですね。現代日本の権力機構にも残っている前近代的な暗い闇を狩る男が、かつて中世ヨーロッパで異端審問官を断罪したという「グレイヴディッガー」の伝説と重なっていくという構成も見事です。ついでながら「グレイヴディッガー伝説」そのものも、著者の創作だそうです。
2016/3