りぼんの読書ノート

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クロニクル3.ある殺人の記録(リチャード・ハウス)

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イラク復興計画に関連する不正事件を描いた第1部・トルコの逃避行第2部・砂漠の陰謀の続編は、「作中作」へと一転します。

本巻のタイトルである「ある殺人の記録」とは、第1部で行方不明になったアメリカ人青年エリックが読んでいた本であり、第2部でレムが妻と最後に見にいった映画の原作でもあるのです、

舞台はイタリアのナポリ。下町の人々が巻き込まれた殺人事件は、戦争直後に出版された同名の小説に触発されたものでした。「狼と兎」と名乗る兄弟が借りた地下室で発見された、大量の血と人体の一部。後にタンクの中から発見された別人の死体。

不運なイタリア人運転手が犯人の隠れ蓑にされ、障碍を持つ男に発見された遺留品は焼却される。被害者の1人はアメリカ人青年らしく、エリックである可能性も高いのですが、人物は特定されません。もちろん真犯人は不明のまま。1年後にはこの事件を題材にした小説が書かれ、2年後には映画が撮影されるのですが、その際にもまた事件が起こるのです。

作中作の作中作というべき、戦争直後の同名小説のアメリカ版では削除された序文に、重要な意味があるのでしょうか。序文の書き手の恨みは、解放者の皮を被って犯罪を犯したアメリカ軍人と、見て見ぬふりをした下町の住民たちのどちらに対して向かっているのでしょうか。そしてそれは、「イラク解放」と何らかの関連があるのでしょうか。

最終巻となる第4部で、本書・第3部が挿入された意味を含めた全てが解明されることを望むのですが、どうもそうはならないような予感がしています。第1部でエリックの母親アンが、息子が所持していた小説を読んで「まとまりがなく、不快で、なんの理由も書かれていなければ、謎の解明もされていない」との感想を語っていましたし。

2015/11