りぼんの読書ノート

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本朝金瓶梅(林真理子)

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中国で何度も禁書となったエロ小説『金瓶梅』を日本版にアレンジした作品です。富豪の西門慶は札差の西門屋慶左衛門、妾の藩金蓮はおきん、正妻の呉月娘はお月と名前を変えて登場。

金もあれば男ぶりもよい、江戸で評判の女好きで「今助六」と呼ばれる西門屋慶左衛門が見初めたのは、姦婦のおきんでした。小悪党の妻として美人局で金を巻き上げていたおきんでしたが、西門屋と亭主を秤にかけて、亭主を毒殺。西門屋の妾となりおおせて、本宅に乗り込み、おっとりした正妻お月との奇妙な同居生活が始まります。

もちろん、これだけで納まる物語ではありません。淫らで、欲深で、意地の悪い点では、西門屋とおきんはいい勝負。西門屋は新しい女に次々と手を出し、おきんはその度に競争相手を蹴落としていくというのが、お約束の展開。口説きセリフやベッドシーンを大量に含む、男と女の騙し合いや、女と女の戦いが綴られていきます。これだけの内容を盛り込んでおいて陰湿にならず、むしろ登場人物たちの人間性を感じさせるというのは、著者の力量なのでしょう。

原作の西門慶と藩金蓮は、『水滸伝』にはサブキャラとして登場しており、武松によって殺害されてしまうのですが、本書にも武松(たけまつ)という男が登場。おきんは、武松にライバルのおりんを殺害させるという、一石二鳥の罠を仕掛けるのですが、この先はどうなるのでしょう。不倫女に厳しい林さんが、おきんをのさばらせたままにするとは思えませんしね。続編として『お伊勢篇』と『西国漫遊篇』が出ています。全3巻のシリーズとは知りませんでしたが、最後まで読んでみましょう。

2015/5