りぼんの読書ノート

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第三の銃弾(スティーヴン・ハンター)

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著者とおぼしき作家が暗殺される冒頭シーンは、「現実世界と小説世界を縦横に行き来する」本書に対する「仕掛け」なのでしょう。作家は、「ケネディ大統領暗殺の真相」を暴露する予定だったというのです。ボブ・リー・スワガーが、未亡人からの依頼に応えて調査を引き受けたのは、作家が入手した「新事実」の存在でした。それは、『極大射程』事件との繋がりを示すものだったのです。

著者は、銃器のプロらしく、銃弾についての謎から「ケネディ暗殺事件」に挑みます。なぜオズワルドは、最も狙撃が容易であったポイントで発砲せず、次に容易であった第1射撃を外していたのに、最も難度の高くなっていた第3射撃を命中させることができたのか。第1と第2の銃弾が発見されているのに、なぜ第3の銃弾が見つかっていないのか。

著者が準備した「回答」は、「オズワルドは使い捨ての囮であり、別の真犯人が第3の狙撃を行った」というのもですが、それだけなら珍しくはありません。すでに著者自身、同様のアイデアから名作『極大射程』を書いているほど。本書の真骨頂は「第3の銃弾が消えた謎の解明」にあるのです。説得力ありますよ。

もちろん、それだけの作品ではありません。「真犯人」の存在は早い時点で明らかにされますが。偽装によって消息を絶っている「真犯人」とボブが、互いにハンティングを仕掛け合うクライマックスは、著者がもっとも得意とするところ。

ついでながら、冒頭で殺害される著者とおぼしき作家が、「自動車事故を装うヒットマンを登場させた小説はイマイチ(黄昏の狙撃手)」で、「日本刀を登場させた小説は後悔している(四十七人目の男)」という箇所は、「笑うところ」ですよね。

2015/1