りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

キャリア警部・道定聡の苦悩(五十嵐貴久)

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東大卒のキャリア組ながら、配属先の県警で起きた不祥事のために現場に配転された道定聡、25歳。頭はいいものの、容姿には恵まれず世間にも疎い新米エリート警部が組まされたのは、警視庁きっての問題児の山口ヒカル。スタイル抜群で絶世の美女ながら、性格は最低でやる気なし。

まあ、こんな感じのアンバランスなペアが事件を解決していくユーモア・ミステリなのですが、新味はありません。交渉人シリーズや映画へのオマージュ作品は面白かったですし、パパとムスメの7日間はドラマ化もされた著者ですが、最近はスランプなのでしょうか。

「Gの密室」 高層マンションの密室から転落死した女性には、自殺の動機がありませんでした。まさか「G」が、あの恐るべき存在だとは・・。それにしても、これはないでしょう。

アリアドネの罠」 祈祷中の教祖を刺殺できる状況にいた宗教団体の幹部は、無実を主張します。う~ん。このトリックも無理筋かなぁ。というより都合よすぎます。

「元気すぎる死体」 男性を刺殺した自首してきた女性の家にいくと、死体がありません。ところが数時間後に再び死体が現れるのです。多くの女性から恨みをかってはいけませんね。

「ダブル・フェイス」 犯人は双子の兄弟のどちらなのでしょうか。唯一違っている点に着目するのは常道ですね。

「落人の首」 捕えられた指名手配犯を護送するために訪れた先は、平家の落人伝説のある山村でした。ところがそこで、新しい首なし死体が発見されてしまいます。指名手配犯は、その件には関わりないと主張するのですが・・。

どの作品も、早く家に帰りたいだけの山口ヒカルのテキトーな指摘が急所をつくパターンでした。過去の五十嵐さんの作品には、優れたトリックを重要な箇所で用いるパターンのものがありましたが、キャラやトリックよりも、まずストーリーが優れていないと、いい作品にはならないと思うのですが、いかがでしょう。

2014/12