りぼんの読書ノート

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天冥の標4.機械じかけの子息たち(小川一水)

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シリーズ第3作アウレーリア一統から2年後、意識を失って目覚めた少年キリアンは、激しい衝動に襲われて目の前にいる少女アウローラと愛し合います。やがてキリアンは、自分が「プラクティス」という致死性の高い感染病「冥王斑」キャリア団体の一員であり、いたたまれない事件を起こして逃亡してきたことを思い出します。しかし、自分はどこにいて、アウローラとは何者なのか。

実はアウローラは、人類に性愛の満足を与えるように設計されたロボットの一族「ラバーズ」の一員で、特別にキリアン用に設計された存在だったのです。その背景には「ラバーズ」を敵視する存在がありました。本書は「ラバーズ」が危機を乗り越え、創始者ウルヴァーノの呪縛から逃れて自立していくまでの物語です。

愛の極致とは、文字通り一体化する「ヒュージョン」なのか、精神的な高みで交わる「マージ」なのか。そもそも子孫繁殖を目的とすることのないロボットに、愛の極致を極めることができるのか。キリアンとアウローラの愛の遍歴はどこに至るのか。第一世代のハードウェア造営責任者ロボットであり、本書から見ると未来の物語である第1作にも登場しているラゴスは、どう絡んでいくのか。

ロボットの存在意義については、アジモフの時代から多くのSF作品で何度も描かれていますが、本書のバックボーンは手塚治虫ですね。それも「アトム」ではなく、「火の鳥」の匂いを感じます。

2014/11