りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

コレリ大尉のマンドリン(ルイ・ド・ベルニエール)

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この本のテーマは何だったのか、読後に考え込んでしまいました。ギリシャの島で第二次世界大戦末期に起きた悲劇を描く反戦小説なのか、イタリア軍将校コレリとギリシャ娘ペラギアの半世紀に及ぶ恋愛物語なのか、それともケファロニア島という地域を擬人的に主役においた地域史なのか。

冒頭は、牧歌的ともいえる島の生活が語られます。無免許ながら村人の信頼を集める医師イアンニス。独立心旺盛な医師の娘ペラギア。ペラギアに恋する漁師の青年マンドラス。醜女ながら行動力のある母親ドロスーラ。お茶目な少女レモーネ。いつも酔っぱらっているアルセニオス神父。素朴な山羊飼いのアレコスら・・。

そこに戦争勃発。ギリシャを侵略してきたイタリア軍は負け続けたものの、結局はドイツ軍の力を借りてギリシャ占領。アドリア海に浮かぶケファロニア島にも、イタリア軍とドイツ軍が進駐してきます。それでもしばらくは、島の雰囲気は変わりません。音楽を愛するコレリ大尉の人柄が、ドイツ軍をも和ませたのです。そして、ペラギアはコレリと恋に落ちます。マンドラスは失恋するけれど、このあたりまでは微笑ましい展開。

しかし、イタリアの単独講和をきっかけとして、全てが暗転していくのです。ドイツ軍に降伏したイタリア将兵の虐殺。戦後まで続いて国民を二分した内乱。そして大地震。コレリの生死もわからない中、激動の時代をたくましく生き抜くペラギア。そして半世紀近くが過ぎた後に起こった奇跡・・。

冒頭で本書の主題が不明確と述べましたが、それら全てを盛り込んだ結果、全てが総合されて、「普遍的な人間賛歌」となったように思えます。ある意味で、奇跡の小説です。ニコラス・ケイジペネロペ・クルス主演で、映画化もされています。

2014/11