りぼんの読書ノート

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狼の夜(トム・エーゲラン)

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ノルウェー発の国際謀略サスペンスです。チェチェン問題をテーマにしたテレビの討論番組の生放送中、出演していたチェチェン人亡命者の一団がテロリストの本性を剥き出しにします。武器を持ち、爆弾まで身体に巻いていた亡命者たちにTV局はあっさり乗っ取られてしまい、出演していた外務大臣やジャーナリストらまでもが人質に取られる始末。生放送の続行を要求されるなかで、長い一夜が始まります。

もちろん要求が出されます。とはいえ、ノルウエー政府に対してチェチェン独立の要求などしても、どうなるものでもありません。しかし犯人たちの真の要求は、ある人物を呼び出すことにあったのです。そもそも、彼らはチェチェン解放を望む戦士でも、テロリストでもなかったというのが、本書の核心部分ですね。

本書は映画化されましたが、事件の背後に隠された大国の陰謀という点が問題になって、ロシアでは上映禁止となったそうです。確かにサスペンスなのですが、チェチェンに生まれ育って鷲と狼と呼ばれた2人の青年たちが、それぞれ異なる道を歩むようになるまでの叙情的な側面のほうが優れています。また、本筋ではありませんが、ロシア大使の娘の正体には意表を衝かれました。

2014/7