「
京極堂」シリーズ作品のサイドストーリーが10編収録されています。一応それぞれ独立した作品となっていますが、本編を読んでいるほうが楽しめるのでしょう・・たぶん。本編は未読なので、断言できないのですが。
「小袖の手」:「絡新婦の理」の
絞殺魔・杉浦が「
魍魎の匣」の柚木加菜子と出会います。和服の小袖から伸びてきた白い手の持ち主は、加奈子の母なのか。姉なのか。それとも・・。
「文車妖妃」:「
姑獲鳥の夏」の嬰児誘拐犯・
久遠寺涼子が、妹への嫉妬心を剥き出しにします。擬人化した恋文の執念とは、涼子の二重人格性のことなのでしょうか。
「目目連」:「絡新婦の理」の目潰し魔・平野祐吉は
視線恐怖症でした。隣家の小町娘・矢野妙子から障子越しに覗かれているのではないかと妄想を抱きます。
「鬼一口」:薫紫亭と鬼談義を交わした鈴木敬太郎は、後に「
魍魎の匣」で少女連続殺害犯となる
久保竣公が不幸に堕ちていく柿崎芳美の家族を観察していることを聞かされます。
「煙々羅」:
消防団員として「
鉄鼠の檻」の松宮家や明慧寺の火事の消火した棚橋祐介が、人間を焼いた煙に対する妄執を語ります。
「倩兮女」:「絡新婦の理」で平野祐吉に殺害される山本純子は、女性解放運動家として柴田財閥の御曹司との結婚を迷っていました。彼女は笑うことができなかったのです。
「火間虫入道」:「塗仏の宴」で藍
童子こと彩賀笙に操られ目黒署警部補の岩川真司は、やがて精神を病んでいきます。
「襟立衣」:「
鉄鼠の檻」に登場する円覚丹は、
新興宗教教祖であった祖父の能力を貶める父を許せずに家を出ますが、祖父の弟子であった牧村拓道から死を前にした父親と再会させられます。
「毛倡妓」:警視庁の刑事である木下圀治が娼婦を嫌う理由は、幼い頃の奇妙な体験にありました。赤線取締の際に逃した
桑原豊子は、後に一家7人殺害事件を起こして自殺します。
「川赤子」:多くの作品に登場する
関口巽と雪絵夫妻は子宝に恵まれません。中禅寺敦子から「開かずの部屋から掻き消えた
産婦人科医」の話を聞き、敦子の兄の
京極堂に相談へと向かいます。
どの物語でも、妖しいものは、「人の心」ですね。
2014/5