りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

緑の毒(桐野夏生)

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ストーリーはシンプル。妻の浮気への嫉妬から連続レイプ犯になってしまった中年開業医の転落劇。章ごとに視点を変えていることは、物語を重層的にする反面で、散漫な印象も与えます。雑誌『野生時代』」に不定期連載であったせいでしょうが、未解決のまま残された箇所が気になります。

物語の一方では、クリニックの院長である39歳の川辺の心が壊れていく過程が描かれます。一人暮らしの女性の部屋に侵入して、スタンガンと薬剤で昏睡させた女性をレイプするという最低野郎。それでも転落を避けえると思っているのですから、人間の業は深いもの。

もう一方では、レイプされた女性たちや、川辺の周辺にいる人々の様子が描かれます。一旦は泣き寝入りを覚悟したものの、ネットを利用して連絡を取り合うようになります。情報交換に勤めた結果、ついに川辺クリニックの事務員と出会って、川辺を追い詰めていくのですが・・。

レイプした女性たちから追い詰められる川辺が、「実際に姿を見ると皆、嫌いなタイプの女性だった」という点にはペーソスを感じますが、しょせん最低野郎のことですから同情の余地も、共感のしようもありません。

2014/4