りぼんの読書ノート

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ケルベロスの肖像(海道尊)

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「バチスタシリーズ完結編」とのことで、田口・白鳥のみならずこれまで登場した人物が多く出演。東城大学医学部付属病院と桜宮病院の30年に渡る確執に決着がつくと同時に、著者の主張である「死亡時画像診断(AI)」の普及を確信するようなエンディングになりました。

アリアドネ・インシデントから1ヵ月後、AIセンターの開業を前にした東城大病院に脅迫状が舞い込みます。犯人は桜宮病院の生き残りのようなのですが、それは小百合なのか、すみれなのか。高階病院長の学生時代の友人というノーベル医学賞候補の大物・東堂をアメリカから招聘し、警察・医療のAI反対派である斑鳩や南雲を巧みに抑えながらAIセンターの開設に向けて準備を進めるセンター長の田口でしたが・・。

ロジカル・モンスター白鳥の傍若無人ぶりは相変わらずですが、田口は別シリーズで活躍していた氷姫こと姫宮とは初対面だったのですね。放射線科の島津や、房総救命救急センター彦根や、ジュネーブ大学画像診断課のシオンらに加えて、螺鈿迷宮で両病院の確執に巻き込まれた学生・天馬大吉と冷泉深雪や新聞記者の別宮葉子らも見守る中で、AIセンター開設の日に事件が起きるのです。

冥界の番犬である三つ首のケルベロスには、双頭の犬であるオルトロスと、名前も残されていない普通の犬という弟がいたそうです。伝説になった兄たちと異なり、子孫を残して世界中に広まったのが普通の犬なんですね。「ケルベロスの塔」と呼ばれる巨大AIセンターが失われても、AIが普通の犬として広まって欲しいという著者の願いが込められたタイトルです。

2013/12