りぼんの読書ノート

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六条御息所源氏がたり1.光の章(林真理子)

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「私の名を、どうか聞いてくださいますな」と語り始めたのは六条御息所です。林真理子版の源氏物語が幕を開けます。ダメ男に厳しく、不倫女にはもっと厳しく、嫉妬の感情を書かせたら天下一品の林さんが、光源氏をどう描くのか。嫉妬心から生霊にまでなった六条御息所の視点から、正妻であった葵や紫や女三の宮を、結局は不倫相手だった藤壺や夕顔や明石や朧月夜を描くというのですから、これまでの源氏とは一味も二味も違いそうです。

第1巻は、桐壺帝と桐壺の更衣の異常な熱愛から誕生した光源氏の青年期。2度目は身をかわされた空蝉との初不倫。したたかなブリっ子の夕顔に夢中になりすぎて起こった悲劇。義母・藤壺との大不倫。10歳の若紫に萌える少女趣味。薄幸な高位の女性に手を出したら大外れだった末摘花。六条御息所を生霊とさせた葵の出産と死。老女・源典侍にまで手を出す変態ぶり。そして罪の大きさにおののいた藤壷が出家する場面で幕を閉じます。

息つく暇もないほどスピード感たっぷりです。若い日の光源氏はほとんど病気ですね。ストライクゾーンの広さと変態絶倫ぶりに加えて、悩みも反省も5分も持たず、見る女すべてに声をかけていくのですから。亡き母への満たされない思いがそんなキャラを作ったという解釈は、フロイトに先立つこと900年。しかし、そんな男に無理やり押し倒されただけでなく、その男を本気で愛してしまい、しかも愛人にすぎないというのですから、タカビーでジコチューの六条御息所が嫉妬に狂うのは当然でしょう。

林さんは夕顔がお嫌いのようですね。頭の中将との間に娘までもうけているヤンママなのに、あどけないふりをして男の気を引く女の嫌らしさの描き方は、小気味いいほどです。

2013/12