りぼんの読書ノート

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キャピトルの物語(オースン・スコット・カード)

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神の熱い眠りに続く「ワーシング年代記」の後半部分は2部構成になっています。

第1部は遥か過去に遡って、強大な権力を得たアブナー・ドーンが銀河帝国の破壊を望むようになるまでの物語。人工冬眠技術による「偽りの不死性」を手に入れた特権階級と、彼らが支配する爛熟して停滞した帝国は、一度破壊されて生まれ変わるべきだというのです。帝国首都キャピトルと破壊者アブナー・ドーンの関係は銀河帝国の興亡』のトランターと預言者ハリ・セルダンの関係に似ていますが、ドーンのほうが魅力的です。

著者が19歳のときから書き溜めていた短編を再構成した作品とのことですが、「偽りの不死性」がもたらすさまざまな短編エピソードを積み重ねて歴史の流れを叙述する方式は、『われはロボット』と似ています。やはり著者の初期作品は、アジモフの影響を大きく受けているんですね。

第2部は、アブナーによって外宇宙に殖民したジェイスンの超常能力を受け継いだワーシングの子孫の物語であり、伝承めいた「鋳かけ屋ジョン」や「怒れるイライジャ」などが登場します。これらの作品が統合されて神の熱い眠りという「大きな物語」となったわけですが、個人の思いなどのデティルは、こちらのほうが書き込まれています。やはり両方読む価値はあります。

2013/10