りぼんの読書ノート

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ルパン傑作集6.水晶栓(モーリス・ルブラン)

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ルパン自身が「生涯最大の難事件」と語った事件は、フランスで実際にあった「パナマ運河疑獄事件」という巨大な政治的背景、悪徳代議士ドーブレックという強敵、水晶栓という難解な謎、美女クラリス・メルジという手強い恋の相手と、4拍子揃った作品に仕上がっています。

代議士ドーブレックの別荘に押し入ったルパンでしたが、計画が狂って手下が逮捕されてしまいます。世紀の怪盗の一味とのことで異例の速さで死刑が決定された手下を救うため、ルパンは政府との取引材料として「パナマ運河疑獄」に関連した閣僚・代議士のリストを盗み出そうとするのですが、その文書もまたドーブレックの手中にあったのでした。

一方でパリ警視庁のプラビル副総監もまた、水晶栓の謎を追っていました。彼自身も「パナマ運河疑獄」に関係していたんですね。さらに事件の影に見え隠れする謎の美女クラリスは、かつてドーブレックとプラビルの双方から思いを寄せられ、別の男性と結婚したものの現在は未亡人となっている女性でした。しかも彼女の息子こそ、獄中に囚われているルパンの手下のひとりだというのです。

文書の隠し場所のヒントこそが「水晶栓」。それは瓶のふたでも、葉巻に見せかけた細工でもなく、意外なものだったのですが、果たしてルパンは手下の処刑に間に会うのでしょうか・・。

この事件の間、ルパンにはいつもの余裕は見えず、むしろ無力さを嘆く気弱さが目立ちます。もちらん最後には起死回生の手を打つのですが、禁断の美女クラリスに惚れてしまった弱みでしょうか。でも彼女には大きな息子がいるのですから、結構な年齢ですよね。40歳くらいでしょうか。ルパンよりかなり年上のはずですが、ひょっとして熟女好き? ちなみに彼女は、ルパンの最初の妻であったクラリス・デティーグ嬢とは別人です。

2013/3