りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ひなこまち(畠中恵)

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しゃばけシリーズも第11弾となりました。ひところ中だるみ感もあったものの、死生観や世界観を前面に出した重めの路線への転換は成功したと思います。前作と本作は少々軽めの路線に戻っていますが・・。

本書は、いつも元気に寝込んでいる長崎屋の若旦那の一太郎のもとに、「お願いです。助けてください」という木札が届いたところから始まった、人助けの物語です。「5月10日まで」という期限がついてはいるものの、どこの誰が救いを求めているのかわからずまるで雲を掴むような話なのですが、いつもながらの頭の冴えと妖(あやし)たちの手助けで、何とかしてしまうところが楽しいですね。

「ろくでなしの船箪笥」 上方の叶屋の娘・千里さんと結婚した友人の七之助が、祖父の遺品の船箪笥をもらったのですが、からくり細工の箪笥を開くことができません。中には河童が閉じ込められていたのですが・・。

「ばくのふだ」 怪談落語で有名になった噺家の本島亭場久の正体は、夢を食べる獏でした。ある日、客に斬りつけられて夢を食べるのを忘れたために、奇妙なことが次々に起こります。早く犯人を捕まえなくてはならないのですが・・。悪夢を食べる獏なら、怖い話は得意ですよね。

「ひなこまち」 雛人形のモデルを選ぶ美女コンテストは、子のできない大名の側室選びのようです。綺麗な古着も飛ぶように売れるのですが、古着屋の娘・於しなの店から品物が盗までてしまいます。ところで、美女コンテストの日が5月10日なのですが・・。

「さくらがり」 上野へ花見に出かけた一太郎一行を訪れたのは、かっぱを束ねる女傑の禰禰子でした。仲間を助けられたお礼に不思議な薬を持参するのですが、惚れ薬が盗まれてしまって大騒ぎに。犯人は、妻の雪柳に惚れて欲しいという安居と名乗る武士なのでしょうか?

「河童の秘薬」 実は安居は美女コンテストのスポンサーとなった大名でした。妻の雪柳と相思相愛なのに、子ができないと周りが放っておいてくれないんですね。「人生を変える」という命がけの丸薬を飲んだ雪柳は、周囲お人々を夢の世界に取り込んでしまうのですが・・。

もちろん問題は解決して、ハッピー・エンドで納まります。ことろで、これまで多くの男女の仲立ちもしてきた一太郎ですが、彼の恋愛と結婚はまだまだ先のことなのでしょうか。気になるところです。

2013/1