りぼんの読書ノート

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カラマーゾフの兄弟 第3部(ドストエフスキー)

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いよいよ物語は「父殺し」のクライマックスへと入っていくのですが、その前に不思議な異変が起こります。大往生を迎えたロシア正教のゾシマ長老の遺体からおぞましい腐臭が漂い出すのですが、それは、天国に召された者の遺体は腐らないというロシア的信仰とは相容れないものでした。長老の死の悲しみに追い討ちをかけられたアリョーシャの信仰は揺らぐかに見えるのですが・・。

一方、第2巻で姿を消していたミーチャの行動を追って物語は疾走していきます。カテリーナに借りて散財してしまった3000ルーブルを返済して片をつけ、グルーシェンカと結ばれたいと願うミーチャは、自分の恥辱をそそぐための金策に走り回っていたのです。万策尽きたミーチャはある決意を持って、遺産を分配しないどころか恋敵でもある父親フョードルの家に乗り込むのですが・・。

読者は、馬車に乗る金も持ち合わせていなかったミーチャが、父親の家から戻ってきた後では大金を手にして、気が触れたかのように散財しまくる場面を目撃することになります。父親の家で起きたことは老僕の殴打だけだったのでしょうか。

昔の恋人と再会して、ずっと抱いていた恋心が幻想にすぎなかったことに気づいたグルーシェンカも、ミーチャの純愛に感動してテンションをあげまくります。2人の高揚感がピークに達したときに乗り込んできた官吏によって、ミーチャは父親殺しの罪で逮捕されてしまうのですが・・。

ここから物語はミステリ的な要素を帯びてきます。全ての状況証拠も、ひとたびは自殺を決意して最後の散財をしまくったミーチャの心情も、彼が犯人であることを指し示しているように思われるのですが、真実はどこにあるのでしょう。そして最終巻が向かう先とは?

2012/8再読
第3部目次
第7章 アリョーシャ
第8章 ミーチャ
第9章 予審