りぼんの読書ノート

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郭公の盤(牧野修)

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いわゆる「伝奇ロマン小説」ですが、最後はちょっと破綻してしまったようです。
イザナギイザナミの神話時代に端を発する「郭公の盤」とは、古くは卑弥呼が用い、古代中国でも模倣された形跡があり、平家滅亡とともに行方をくらまし、終戦末期に本土決戦をもくろむ青年将校が最終兵器として手に入れようとした・・とのいわくが盛りだくさんですが、なにやら「禁断の兵器」であることが想像されます。

その「郭公の盤」を国力が疲弊した近未来の日本に蘇らせようとする謎の集団に対し、皇室の守宮となって歴史の陰に潜んでいた一族の末裔・金四郎が戦いを挑むのですが、これまた眼が耳になってしまうという宿唖に犯されていて、最終兵器が「耳無し抱一」の琵琶というのですから、秘密はなにやら音楽に係わるもののようです。

発端はおもしろそうなんですよね。音楽探偵をしている守宮一族の金四郎が、女性を流産させるという御橋良流の和歌や、既に全員が発狂して死亡したとされる女性バンド・アムネジアの音楽を聴いて失踪した蓮華美術館学芸員の律子の探索に係わったことから、蓮華教団や日輪憂国会なる組織に近づき、その背後には現役総理が・・というあたりでは、次に何が飛び出してくるのかという期待が膨らみます。

ただ、金四郎に惚れていた静香が総理秘書となるくだりや、耳なし抱一の琵琶の音に導かれて東京湾に押し寄せるイルカの大群と浮かび上がる淡島・・となると苦しいな。「古代神社に祀られる不死の蛭子」までは耐えられたのですが・・。

2012/8