りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

玉村警部補の災難(海堂尊)

イメージ 1

チーム・バチスタの栄光から続く「田口・白鳥シリーズ」の脇役が、桜宮警察署の玉村誠警部補。彼の視点で、病院の不定愁訴外来責任者の田口公平と一緒にさまざまな事件を振り返ります。実質的な主人公は「デジタル・ハウンドドッグ」こと加納警視正ですね。

「東京都二十三区内外殺人事件」
死因不明大国である日本の検死制度を強烈に皮肉った作品です。厚生労働省の会議に出席するため上京した田口は、公園で身元不明の遺体を発見。白鳥は勝手に遺体を移動させて監察医務院に運び込み、解剖を依頼するのですが、その理由は、隣県の嘱託警察医は解剖せずに検死診断書を書くからというのです。AIによる死体の画像診断が威力を発揮します。

「青空迷宮」
桜宮市のテレビが企画した迷路脱出バラエティ番組の収録中に殺人事件が発生。被害者はお笑いトリオの中から1人だけ売れて活躍している男で、容疑者はこのトリオの他の2人。ひとりは売れない芸人を続け、ひとりはテレビ局のADをしているのですが、カメラでモニターされる迷路は一種の密室になっていました。

「四兆七千億分の一の憂鬱」
主婦が殺害された事件の犯人は、不倫相手の男なのか。妻を寝取られた夫なのか。ところがDNA鑑定結果が一致したのは、被害者とは何の接点もないフリーターの男だったのです。DNA鑑定結果は絶対なのでしょうか。

「エナメルの証言」
桜宮市で、新興暴力団の組員が焼身自殺で発見される事案が相次いで発生。遺書も存在し、歯科医による治療跡確認鑑定でも不審な点が見られないのですが、狩野は疑いを抱いて捜査に乗り出します。他人の死体の歯を加工して暴力団員を死んだことにする「生まれ変わりビジネス」はロンダリングですね。ここでもAI画像診断が威力を発揮するのです。

2012/6