頻繁に転勤を繰り返す二流大学教授の父を持つ女子高生のブルー・ヴァン=ミアは、全米各地を転々としながら本を唯一の友として育ってきましたが、最終学年になってある私立のエリート校に転入します。
人づきあいが苦手なブルーは、なぜか謎めいた美人女性講師ハンナを囲む、イケテル生徒たちのグループ「ブルー・ブラッズ」に取り込まれてしまいます。それだけなら居心地の悪さを感じるだけなのですが、グループのメンバーに誘われて忍び込んだハンナのプライベート・パーティである男性が死亡したあたりから、不思議な展開となっていくのです。
ハンナがブルーにささやいた「ブルー・ブラッズ」メンバーそれぞれの悲しい過去は、すべて嘘であり、むしろそれはハンナ自身の過去の断片ではないかとの疑いを抱いて彼女の正体を探ろうとした途端に、ハンナが死亡。それは自殺なのか殺人なのか。そして、あろうことかブルーの父親まで謎の失踪を遂げてしまうのです。
一連の事件の合理的な解釈は、父親もハンナも地下に潜み続けていた過激派集団の幹部だったのではないかというものだったのですが、こうなると、ブルーが幼い頃に事故死した母親の死因すら疑わしくなってきます。知とミステリーの迷宮に「転落」したブルーの解釈は「正解」なのでしょうか。それとも妄想にすぎないのでしょうか・・。
各章には、シェイクスピア、ブロンテ、メルヴィル、フローベール、フォースターらの古今の名作のタイトルがつけられて、文学概論を模した叙述になっており、最終章の「最終試験」は、読者への挑戦状になっています。
各章のタイトルと内容の比較も楽しいですし、ミステリ的なヒントも随所に隠されています。本書が「少女成長小説と知的ミステリの奇跡の融合」と賞賛されているのもわかりますが、オープン・エンディングを物足りなく思う読者も多いでしょうね。
ちなみに本書の中にはタイトルとなっている作品のみならず、多くの文学作品からの引用文が数多く登場しますが、ほとんどが著者の「創作」だそうです。^^;
2012/1