りぼんの読書ノート

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天使の運命(イサベル・アジェンデ)

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著者の処女作にして大傑作『精霊たちの家』に続く3部作の1作目にあたる作品は、出生に秘密がありながら、チリに住むイギリス人家族に養われている少女エリサの恋愛と成長と物語。

エリサの娘リンが産み落とした女児オーロラの物語が2作目の『セピア色の肖像』で、リンに失恋してチリに戻った男性の娘が『精霊たちの家』のクラーラだそうです。ソマーズ家は、実直な経営者ジェレミーと、船長になって海に乗り出した弟のジョン、美女ながら初恋の人を忘れられずに独身を通している妹ローズの3人兄弟ですが、エリサはローズによって実の娘のように大切に育てられます。

しかし、エリサが愛したのは才能がありながら下層階級の労働者にすぎないホアキン。エリサの妊娠を知らないまま、ゴールド・ラッシュに湧くカリフォルニアに旅立ったホアキンを追い、エリサは密航者となってサン・フランシスコへと向かいます。

しかし広いアメリカで、簡単にホアキンを探し出すことなどできるはずもありません。密航中に流産したエリサを助けた中国人医師タオ・チェンの愛を振り切って、少年の扮装で西部を彷徨うエリサに聞こえてきたのは、お尋ね者の犯罪者がホアキンではないかというウワサでした・・。

あの『精霊たちの家』に続く作品と思わなければ、「ハーレクイン」レベルです。ローズやタオ・チェンの過去の物語や、ローズに恋するインチキ聖書売りのトッド、お嬢様ながら実業の才があるパウリーナ、さらには西部に生きるさまざまな人々のエピソードには面白い部分があるけれど、エリサ自身に魅力がないんですね。

前半では世間知らずで身勝手な若い娘にすぎず、冒険を重ねて経験を積んだ後半でもタオ・チェンの無償の愛に甘えるワガママ娘でしか見えないんですから。初恋を「運命的な純愛」と思うようなウブな読者でもありませんし・・(笑)。

南米マジック・リアリズムの系譜に連なるベストセラー作家と紹介されていますが、神と野獣の都ゾロもイマイチでしたし、この人は『精霊たちの家』だけの一発屋だったのかもしれません・・とは言いすぎかな?

2011/12