りぼんの読書ノート

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リトル・シスター (レイモンド・チャンドラー)

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チャンドラー本人が「嫌い」というこの作品は、ハリウッド内幕というプロットが優先されすぎ、最後まで読んでも誰が誰を殺したのかわからないほどストーリーも混乱しており、主人公のマーロウも疲れているようなのですが、村上春樹さんは「愛おしい作品」と言っています。

マーロウの下品さを責める小柄で身綺麗で堅苦しい田舎娘ながら、実はしたたかな「リトル・シスター」ことオーファメイが、素晴らしく上手く書けているんですね。そして大傑作ロング・グッドバイに繋がる作品というのですが、いかがでしょう。

ロスで行方不明になった兄オリンを探し出して欲しいと、20ドルを握り締めて登場したオーファメイの依頼を受けて、捜索に乗り出したマーロウが見出したのは、都会暮らしで身を持ち崩し、恐喝者となっていたオリンだけではありませんでした。

オリンが恐喝した相手は、ハリウッド女優と付き合っていたクリーブランド出身のギャング、スティールグレイブだったのです。しかもそのハリウッド女優こそ、オーファメイが繋がりを隠していた姉のメイヴィスだったのですから複雑です。しかも、メイヴィスの女優仲間のドロレスはさらに謎めいた存在。

やがてアイスピックを凶器に用いた殺人が起こり、真犯人と思われたギャングのスティールグレイブも殺されて、メイヴィスの女優仲間のドロレスからの依頼で事件現場に現れたことを咎められたマーロウは警官から尋問されるのですが・・。

旧訳のタイトルは『かわいい女』でしたが、オーファメイは可愛いタイプではありませんね。姉のメイヴィスのことを指したタイトルだったのかもしれません。

2011/12