女錠前師のお緋名を主人公とする『緋色からくり』の続編です。
幼馴染みのハンサムな床屋の甚八や、お調子者でも芸には厳しい深川芸者の祥太、隠密目明しの康三郎、黒鉄屋の若旦那だったのに店が潰れて錠前師見習となった与治郎などは既にレギュラーメンバーです。そうそう、人見知りする猫の大福もいました。
前作の事件はお緋名自身の過去に関わるものでしたが、今回の事件も根の深いものになっています。発端は大門屋の美人姉妹の一人およしが殺害されたという痛ましい事件。でも、なぜか姉のおきみは姿を現しません。やがて、およしが「さらわれてきた子ども」だったとの噂が流れてきます。
一方お緋名は旗本の三井家から、気が触れた妹の彩を幽閉する座敷牢の錠前を作って欲しいとの依頼を受けます。今でも錠はかかっているのですが、なぜか彩は誰にも知られずに外に出て奇妙な行いをしていると言うんですね。彩が正気ではないかと疑ったお緋名は、錠前に特別の仕掛けを仕込むのですが・・。
この2つの事件は深いところで繋がっていました。三井家の優秀な跡継ぎである靖之進の「裏の顔」とは何なのか。殺されたのは誰なのか。おきみはどうして姿を現さないのか。「自分は心の奥に捻くれた怖いものを宿しているからこそ、鬼っ子のままでも善人の身内を大切に守りたい」という、ある人物の独白が全てを物語りますが、これだけじゃ、何のことかわかりませんよね。
田牧さんの時代小説を4作品読みましたが、この方うまいですね。宮部みゆきさんの時代小説と共通するような観察眼と巧みさを感じます。
2011/12