りぼんの読書ノート

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白薔薇の女王(フィリッパ・グレゴリー)

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ブーリン家の姉妹』にはじまるチューダー朝物語の次に著者が著わしたのは、プランタジネット朝の滅亡を飾る「薔薇戦争」の時代でした。本書の主人公「白薔薇の女王」とは、ランカスター家のヘンリー6世を破ってヨーク家出身の王となったエドワード4世の王妃エリザベス・ウッドヴィル。

ヨーク派との戦いで最初の夫を失っていたエリザベスは、仇敵のエドワードに見初められるのですが、彼女の母ジャケッタはルクセンブルク家傍系の出身で水の女メリュジーヌの末裔であり、母娘ともに魔力を持っていたというのが本書の伏線です。テーマは、水の女神と人間の男との恋がもたらす悲劇!

王位についてエリザベスを娶ったエドワード4世は、キングメーカーの実力者ウォリック伯ネヴィルに対抗する勢力として中堅貴族ウッドヴィル家の一族を重用。追い込まれたウォリック伯は一度目は前王ヘンリー6世を担ぎ出し、2度目は王弟ジョージをそそのかして反乱を起こします。

エリザベスは母とともに嵐を起こし、娘とともに洪水を起こして夫の治世を守り抜くのですが、夫の死後、息子の王子たちを差し置いてもうひとりの王弟が実権を握り、リチャード3世として即位することは止められませんでした。

聖域のウェストミンスター寺院に逃れたエリザベスのもとに届いた知らせは、優先王位継承権を持つ2人の息子たちがロンドン塔で殺害されたとの凶報。英国王室史上最大の謎とされる「ロンドン塔の悲劇」です。しかし幼い息子たちの生命を奪ったのはリチャード3世なのか、それとも・・。

エリザベスは娘とともに、王子たちを殺した犯人に呪いをかけるのですが、他人にかけた呪いは、やがて自分に返ってくることもあるのです。まして、政略や縁組で敵味方がくるくる変わる時代ではなおさら・・。

このシリーズは、ヘンリー6世の従妹で後にチューダー朝を開くことになるヘンリー7世の母マーガレット・ボーフォートを描いた『赤薔薇の女王』、さらにはヘンリー7世の王妃となるエリザベスの娘の物語が続きます。

本書も映画化されるそうです。この人の作品は、英語圏の空港の書店ではいつも山積みになっていますので、人気のほどがうかがえますね。翻訳シリーズを読むときにはいつも、最後まで出版されるか不安なのですが、日本でも固定読者がついているようですから、心配なさそう。^^

2011/10